ラリーといっしょに歩いてたら、なかみのない貝がおちていた。
 ゆうせい、これね、じめんに絵がかけるんだよ。
 そうラリーが教えてくれた。おれは貝をもってかえった。


 へやにだれもいなかったから、外が暗くなるまえに絵をかくことにした。
 じめんはデコボコだ。右手で貝をもってよこにうごかす。がりっと音がして白いせんが一本かけた。たてにしてもう一本。がりっ。+の形。楽しい。



「遊星」

 重い声。後ろから聞こえた。

「もう暗くなる。部屋に戻れ」

 かおを見なくても分かる。この声はジャックのだ。おれのさみしくない音。灰色じゃない。
 ふくをひっぱられて、おれは貝をにぎったままへやにもどった。ジャックはかえらなかった。おれの近くにいる。まだ音がある。さみしくない。

「飯、持ってきた」

 おべんとうがおいてある。いつもならタカかナーヴが来るのに。でもジャックが来たならいいや。手と手を合わせていただきます。
 スプーンをもっておべんとうを食べた。へやにはジャックがいる。楽しい。ジャックは大切なんだ、よく分からないけど。だから楽しい、さみしくない。
 ジャックは大切な人。
 ジャックはどう思ってるんだろう。

「食べ終わったら歯磨いてこい」

 きれいな色の音だ。ずっときいていたい。けどジャックはあんまり声を出さない。
 ききたいのに。

 そうだ。かけばいいんだ。
 ラリーが教えてくれた貝の白いせん。あれでジャックの音をかけばいい。重くてさみしくない音。きっと楽しい。



「ジャック」

 いいことを思いついた。だからジャックに聞いてほしかった。
 けど、ジャックは。
 おれがよんだら、ジャックのかおが変わった。

「ジャック?」


 ジャックはなきそうなかおをしていた。
 ジャックはいたそうなかおをしていた。
 ジャックは楽しくないかおをしていた。


「……何だ」

 重い音。きれいな色の音。
 この音、おれがずっときいていた声は、もしかして。
 いつもあんなかおから出ていたのか。

「ごちそうさま」

 さみしかった。大切ななにかがからっぽになった。




 ジャックにきらわれた。
 いや。
 ……元から嫌われていたのか、俺は。