無知の模索 : 手段としての飢え




 配線と道具は手に入った。
 知識と手先には自信がある。
 しかし肝心な心臓部が欠陥だらけでいただけない。
 ようやく見つかったマザーボードを傍らに置いて、疼きだした目を閉じてこめかみを指で押した。気休めの指圧は、やはり気休めでしか なかった。
 サテライトで何かを得ようとすると、大概は「引き換え」が必要になる。大半は金で賄われているが、時には身体なんかも質に入れたり するようだ。金など無いに等しい俺の場合、時間と労力を引き換えにした。そのせいで一日一食どころか週に三食の暮らしをしている。
 腹が空いたら水を飲む。ジャンクの山を掘り返して目的のものを探す。ねぐらに帰って、時たまジャックの股を借りる。今の生活はそれ ばかりで成り立っていた。
 閉じた視界は真っ暗だが、ジャックは白い。暗闇で行灯代わりになりそうだ。じゃりつく床に横たえるとそれが際立って、俺はそれが見 たくて上に乗る。多分、床が白くても上に乗るだろう。あいつは睫が長い。いつも見下ろされているから気付かなかった。

 ゆうせい

 あいつはいつもうるさいくせに、あのときはいつも言葉が少ない。主語も述語もなくて、名詞ばかりを口にする。ゆうせい、俺の名だ。 けれど何故だろう、あのときは名を呼ばれるように感じない。猫がにゃあ、犬がわん、と鳴くのと同じように感じるのだ。あのときの ジャックはああ言って当然、俺は当たり前にそれを受け止めている。
 俺自身は何を口にしていたかよく覚えていない。あついとか何とか言ってた気がするが、熱にまみれて記憶が曖昧だ。ただ分かるのは、 あいつは硬くてやわらかい事。もっと噛みたくなる硬さで、もっと擦り付けたくなるやわらかさ。例えようのないあれをゴムみたいだと思 っているが、俺はちゃんとした名が欲しかった。捺印された名称。俺はこのぼんやりとしか感覚が嫌いだ。だから週に三食の生活を続ける。
 昨日ジャックが「パンが不味い」と言っていた。そうぼやかれると途端に腹が減って、噛んで舐めて擦りつけたら少し満たされた。俺 にとって、ジャックは食物と同等の何かなのだろうか。名称が欲しい。今の俺は何かがおかしい。


 マザーボードをいじる。画面とキーボード、配線は揃っていた。ネットの書籍になら、俺の知りたいことが載っているかもしれない。 それを読んで理解するまで、週三食間食ジャックで我慢しよう。








まだパソコンが無くて知識ゼロな遊ジャでした。




08/06/13