無知の模索
支給されたパンが不味かった。あるはずのツールが見つからない。
そういう他愛ない話をしていたはずだ。
ゆうせい
呼んでもこいつの目は平たくて無感情で、通りすがりの水たまりを見るような目だ。
そんな目をしながら、遊星は俺に触れる。三大欲求の一を満たす為に、あの目のままで俺に触れる。人間に興味がないのか俺に関心が
ないのか、後者だったら泣くかもしれない。
今の俺は作業着だった。いつもの白くてすっきりする、あの私服じゃない。うす汚れたサテライト人の服装だ。それを遊星は手際よく脱
がせていく。脱がせるといってもただのツナギだ、ファスナーを降ろせばだいたいの作業は終わる。
おまえ、なぜこんなにしろい
遊星はいつもそんな事を訊く。良い返答が思い浮かばず、さあな、と答えたらあいつは返事もよこさずに俺のツナギを放り投げやがった。
残ったのはタンクトップと下着とブーツ。俺から言わせれば間抜けな格好だが、遊星から見るとそうでもないらしい。
俺の腹に置かれた手は鳶色をしている。分厚い手袋は一切の体温を感じさせないが、それがもどかしいとは感じなかった。遊星はそうい
う男だ、知っていたから少しは理解できる。
おまえはあついな
遊星はいつも俺の上に乗る。俺が仰向けでこいつは馬乗り。だからこの時の遊星の顔は、いつもより少し薄暗い。その表情の中には雄独
特の貪欲さも混じっている。なんて事を考えながら、俺もきっと同じような顔をしているのだろと思った。なにせ俺も熱っぽい。
じゃりつく床でのセックスの真似事は、お世辞にも心地良いとは言えない。ちゃんとした寝床はあるがあそこは汚すべきところじゃない。
だから俺はいつも背中が痛いのだが、遊星にそれを言ったことは無かった。言ったところであいつは改善などしないだろう。
鳶色の手が俺の肌を撫で回す。時折弾いたりつねったり。その度に俺はああ、とか、うう、などと湿った声を漏らす。そのあたりになる
と、俺の思考の形は崩れに崩れて、遊星の都合のいい形に捏ね上がっていた。
かり、耳を噛まれる。血が出そうなほどに、容赦なく。痛い、痛いのにそれだけじゃない感覚もある。ごちゃごちゃだ、俺の身体は既に
作り替えられてしまったらしい。
その頃には俺のアレは傍から分かるくらい起き上がっていて、乗っかっている遊星にはまる分かりの状態だった。けれど遊星はマイペー
スに事を進める。首筋を噛んだり二の腕を噛んだり、時々舐めたり。こいつには噛み癖があるのだろうか。俺も男だから何かしたいとは
思うのだが、遊星はペースを乱されるのを嫌う節がある。だから俺は何もしない。できない。
あせのにおいがする
俺たちは何をしているのだろう。もしかしてこれは前戯なのだろうか。俺にはそんな甘ったるいものとは思えなかった。もっと切実で息
苦しい、まさしく欲望発散の前準備のような作業。証拠に遊星のアレも硬くなってきている。これはお互いさま、という事なのだろうか。
おまえのここは、やわらかい。どうしてだ
内腿の付け根をがしりと掴まれて、背筋が跳ねた。遊星は俺の身体でそこがお気に入りらしい。いつもやわらかいと言っては無表情に撫
で回している。俺はそう思わないのだが、遊星はいつも事あるごとに呟いていた。お前の身体は質のいいゴムみたいだと。ひねりのない
言動が何とも遊星らしい。
俺たちはひどく興奮していた。顔は赤いし動悸は激しい。遊星は手つきが雑になってやたらと性急になっている。俺はどうなっているの
だろう。自分の事には思考が回らなかった。視界がぼやけているから、少し涙目になっているのかもしれない。
あし、とじろ
言うとおりに両膝をくっつけた。汗で吸い付く感覚に、条件反射で意識が昂る。上に乗っていた重さがなくなって、ああくるんだな、と
少しばかり身構えた。身体に負担があるわけでもないのに、この行為には覚悟が必要だ。何故かはよく分からない。
折りたたませた内股に、遊星はそそり立ったアレを挟み込んだ。布越しに当たる互い熱に、満たされるような歯がゆいようなどうしよう
もない熱情を覚える。お互いの先走りで下着が少し濡れた。俺はどうにもタイミングを図るのが下手なようで、いつも脱ぐ時期を逸して
しまう。それがいつも、とてつもなく恥ずかしい。
腰を前後に揺らす遊星は、いつもより必死な表情をしている。快感を追う顔が、俺は嫌いじゃない。こいつは俺を見下ろしている。俺越
しに何かを見ているのかもしれないが、今は俺を見ている。それが俺にとっては気持ちがいい。噛んだり舐めたりされるのと同じくらい、
俺は遊星の視線が好きだ。
手を伸ばせば届くのだろうか。それともあの鳶色の手で拒否されるだろうか。俺は怖い。遊星の否定が怖い。
身体を重ねるとねばつくような匂いがした。この独特の匂いはいつも遊星の服から漂ってくる。だからこれは遊星の匂いだ。これが工場
の油の臭気だと知った今でも、この匂いは遊星だけのものだと思っている。緊張するようで安心する、不思議な香り。臆病で手も出せな
い小心者の俺は、この香りを遊星だと思っていつも抱きしめている。
内股を擦る太い熱。それが俺のに当たって何度か喘いだ。あつい、あたたかい、汗が流れる、呼吸が荒い。
早く、早く、はやく。
喉が引きつれて絶頂に昇る。熱がぶつかり合って、苦しいくらいに気持ちがいい。
俺はこのときが一番好きだ。
ジャック
擬似セックスが終わった後の、何と言っていいか分からない、言葉のない感情を乗せた目の色。その目で名を呼ばれるときが、一番好き
だ。だから俺は、下手な言葉を吐きながらも次を期待するのだろう。
サテライトを色々捏造。
ツナギジャック・素股・着衣が萌えどころです(マニアック)
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