兄さんだもの
件名 お前
本文 どこにいる
件名 Re:お前
本文 ジャスコ
件名 Re:Re:頼む
本文 わさびが足りない
件名 Re:Re:Re:頼む
本文 とってきます
件名 Re:Re:Re:Re:追加
本文 チューブのがいい
件名 Re:Re:Re:Re:Re:追加
本文 はい
何故だ。刺身にわさびは必須なのに、どうして買い忘れたんだ。そして俺はあいつに買い物を頼んでしまったんだ。分かっていたのに、こんな事態になるって何となく感付いていたのに。
「なんだ遊星、人が買ってきてやったものにケチつける気か」
無駄にでかい図体にビニール袋を引っ掛けて、偉そうにふんぞり返る金髪。
「手間を掛けたな。ありがとう、ジャック」
「これくらい何てことはない!」
両親の再婚に伴い突然現れた彼。遊星と生まれ月ギリギリの差で弟という立場にぶち込まれた男、ジャックは悠々とした足取りで自室に帰っていった。そしてタッチの差で兄の座に据えられた遊星は、ビニール袋の中身を見て、やっぱりかと言わんばかりに肩を落とした。
「……からし、だ」
この失敗は、何となく予測できていた。
ジャックは料理に疎くて、七味と一味の区別も付かない義弟で、本気で塩と砂糖を間違える奴なのだ。ついでに機械に弱くて、メールの返信内容が一言変換しか出来ないのも、よーく理解していた。
だから遊星は、無言で刺身を眺めた。
刺身はどう調理し直してもおでんやシュウマイ等、からしに合うものにはならない。それに刺身はすぐに痛んでしまうから、できれば今日中に食べておきたい。けれど手元にあるのは練りがらし(チューブ入)だけだ。
「…………氷室から、もらうか」
熟考した後、遊星は隣家の氷室にわさびを借りることにした。
考えたら即実行。突然押しかけてきた遊星に対し、氷室は少し笑うと「醤油は足りてるのか」とわさびと一緒に醤油瓶を丸々貸してくれた。
彼は見てくれこそいかついが、優しくて気遣いの上手い男だ。氷室には他でもよく助けられていたから、遊星は今度菓子でも作ってお裾分けしてやろうと思っている。
遊星は書類上だけであっても兄なので、図体ばかりがでかい弟を叱ったりはしない。
だって彼は悪いことはしていないのだ。
ただ、そう、ちょっと…………馬鹿なだけなのだから。
いい兄さんの日だから、あえてジャックを弟に仕立て上げてみた。思わぬ新感覚。
この後ジャックはからしとわさびの違いを知りますが、一晩寝たら忘れます。
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