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日本の真髄は空気を読むことにある。
第三者的立場であれば、適当な言い訳を使ってその場から立ち去る。当事者であればこちらから引く。
退いてはいけない時以外、日本は真面目とおべっかを上手く扱って世界各国の文化を取り込んできた。
しかし、この状況は如何様にしたことか。
めでたく同盟調印と相成った二国、イタリアとドイツ。
笑顔を絶やさない彼と常に糸を張っているような彼女。
イタリアがヴェーと言えばドイツが怒鳴り、かと思えばドイツドイツと追いかけてはまた笑っている。
「イタリア君、かなりのド根性です」
「ヴェー? 日本何か言った?」
「いえ、お気になさらず」
独り言を聞いたイタリアは気にすることなくドイツにじゃれついている。
ドイツはと言えば「日本の料理百科」と書かれた(もちろん全文日本語表記)を熟読していて、イタリアのヴェーにも全く反応を示さない。片手の日独語辞典のページを捲りながら、必要なところにはしおりやマーカーを引いていた。
「ところで日本」
「ああ、はい」
「この“上糝粉”というのは何なのだ? 私の辞書には載っていないのだが……」
「うるち米を粉にしたものですよ。小麦粉の白米版、とでも言いましょうか」
「なるほど」
問いが終わるとペンを取り出し、メモ帳にすらすらと何かを書き取る。全く読めない文字列、あれがドイツ語なのだろう。先程の会話内容をメモしたのか。何事にも勤勉で実直なのが彼女の特徴だ。
ヴェーヴェーと鳴くイタリアはいつの間にやらドイツの領域に侵入して添い寝をしようとしていた。何と破廉恥な! と赤面しそうになるのも束の間、ドイツは立ち上がって日本の領域に踏み入ってきた。
「日本語というのは難しいな。日本、すまないが私に日本語を教えてくれないか」
「ええ、構いませんよ。それなら私にもドイツ語のご教授をお願いしたいんですが」
「勿論、かまわない」
さっきまでヴェーばかりだったイタリアは、途端にべしょべしょと泣き出した。寂しいのだろうか、でもこの方は相当な歴史を持つ国だったはず。べしょべしょと泣くのだろうか。
「日本、気にするな。いつもの事だ」
全く意に介さない女傑は、料理本の疑問を次々日本にぶつける。日本が事細かに教えていると、べしょべしょという音がいつの間にやら寝息に変わっていた。泣き疲れて眠るとは、まるで童のようだ。
日本の真髄は空気を読むことにある。
けれど、この同盟間にあっては空気を読むこと自体が無粋であるように思えた。
蛇足:この三人はこたつに入ってました
(領域侵犯=隙間出来て寒いよ!)
09/04/30
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