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口から出るのは忙しない呼吸と、断続的な高音。
視覚を奪う闇の中で音だけが明瞭で、それが堪らない痴態を想像させた。
ここには月明かりすら届かない。だから何も見えない。目隠しをしたみたいに。
だから、何をしたって構わない。何をされたって厭わない。だって神様だって闇夜に灯りが必要だったのだから。
「っあ」
目の前には何もない。見知った顔があるはずの場所には、墨を流したような闇が横たわっている。
手を伸ばして彼の肌に触れる。熱く、汗でじんわりと湿った身体。手探りで見つけた肩甲骨に両手を添えて、ゆるく力を込めた。脇腹を撫でていた手がなくなり、代わりにカナダの頬に添えられる。
唇を割られて侵入してくる、熱く蠢く彼の舌。
今までにない感覚に、全身が震えた。
「んあっ、」
下肢からの不意の刺激に、唇の隙間から声が漏れる。酷く濡れた、淫猥な音だ。
見えなくても分かる大きな掌の感触。それがカナダの雄を擦る。ゆっくり、決して急くことなく。優しい指遣いは確実にカナダを追い立てていて、いっそ乱暴にして欲しいなどと捨て鉢な思考がよぎる。
キューバは喋らない。キスしたり髪を撫でたりと場慣れした様子なのに、言葉を紡ぐ素振りは全く無い。
やはり男の相手をするのは気持ち悪いのか。常日頃から抱いていた疑惑は、湧き出した快感にあえなく押し流されていった。
「あ、あっ、」
閉じる努力をしていた口が、初めての快楽に閉じることを忘れる。
間近に感じる彼の吐息すらも性感を高めるばかりで、もはや歯止めも利かない。呼吸が続く限りあられもない声を発し、背を弓のように反らす。カナダの限界を感じたのか、キューバが指の動きを早めた。
感覚が全て下肢に集中して、死んでしまいそうに強烈な悦を脳に叩きつける。心臓が張り裂けそうだ。呼吸が止まりそうだ。喉が潰れてしまいそうだ。言葉を成していない情けない喘ぎ、聞かれたくない。だが口を閉じるのも叶わない。翻弄されるしかないのだ。
「きゅ、ば、さ――あっ、ああ、!」
彼の指が一際強く鈴口を引っ掻いた。
心拍が最大となり、呼吸が止まる。
熱い奔流が体外に放出され、それが止めとなって身体が完全に動かなくなった。残るのは荒い呼吸の音、腹に置かれた掌、汗なのか涙なのか判別の付かない目元の体液。初めて他人から与えられた快楽は、強烈としか言いようがなかった。
「キューバさん」
喘ぎ疲れた舌は上手く発音させてくれず、舌っ足らずになってしまった。
「……キューバ、さん?」
返事がない。
闇は相変わらず部屋中を覆っていてはいるが、肌を重ねているのだから傍に居るのは分かる。でも、どうして返事をしてくれないのだろうか。もしかして――想像するのは、どうしたって悪い方向の考えばかりだ。
「カナダ」
不意に発された声は、快楽が伝染してしまったかのように熱に浮かされていた。
熱っぽい、掠れた声。
こんなのを聞いてしまったら、悪い妄想など全て吹き飛んでしまう。この情けない喘ぎ声で感じたのかもしれない。瑣末なことに反応してしまう未経験な身体に劣情を覚えたのかもしれない。そのどれが正解でも構わなかった。
「……次は、明かりを点けましょうね」
見えない相手に向かって微笑む。
「ああ、次はお前とヤりてえ」
キューバが発した言葉の真意に、微笑みが苦笑に変わるのを感じた。
相手が見えなければ居ないのと同じで。
――彼とセックスをしているという感覚すら、希薄になっていたのが悔しかったから。
エロ(?)習作。現在の想像力ではこれが限界値。
百戦錬磨キューバ×僕は未開拓なのぉ!なカナダ。カナダは顔を見られないと大胆になると思う。
あー精進精進。
09/07/13
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