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「ライドウ、一発芸出来る?」 そう尋ねてきたのは鳴海だった。 探偵社の椅子にぼーっと腰掛けていたライドウが、ちらりと目線を向けてくる。 「ああ、もちろん悪魔使わないやつな! 腹芸とか手品とか、平和的な方向で」 眉目秀麗としか言いようの無い少年だ。大抵の婦女子方は目で殺せるに違いない。しかしそんなナリでも、表向きは書生で探偵見習いである。年末が近いからと話の種になるかと思って振ってみたのだが、失敗かもしれない。 「一発芸ですか」 物憂げに目を伏せると長い睫毛が影を落とす。絵に描いたような美少年だ、実は御伽噺から抜け出してきたんです、なんて告白されたら納得してしまう。瞑目した瞬間には音がするかと思った程だ。 「……出来ますよ」 「へえ、意外。どんなの?」 「秘密です」 なにそれ、とは言わずともバレバレだったらしい。 疑問顔の鳴海にライドウは「都合が付いたらお見せしますよ」と言葉を投げた。 そしてあくる日、とある大事件で帝都が揺れに揺れていた某時。 槻賀田村の白髭湯で疲れを癒していた鳴海は、奇妙な光景を見せ付けられる。 「…………ねえライドウ、何してんの?」 肩まで温泉に浸かっていたから、目の前で直立するライドウを見上げた。ライドウの足元、水面の隙間から覗くモノは……見ないでおこう。 「どうです、題して『鏡の花』」 「いや、あの」 「最新の一発芸です」 「……うん、分かったから」 分かったから、足元に沈められてる雷堂クンを引き揚げてやって。 「十四代目! いきなり何をするか!」 「ああすいません、鳴海さんが一発芸をご所望だったのを思い出して」 「貴様……それを早く言わんか、協力してやるのに。危うく鼻を打つところだったぞ」 「もう打ってるじゃないですか、鼻が真っ赤ですよ」 脱衣所で肩を並べて同じ服に手を掛ける少年二人。肌の色から眉の形まで同一形状、唯一の違いは顔に傷があるかないかだけだ。 「大体な、貴様は説明が足りん。鳴海所長も驚いていたではないか」 「驚かせるから一発芸なんでしょう」 「論点をずらすな。鳴海所長はともかくとして、我を驚かしてどうするんだ」 「一挙両得ですね」 「貴様は阿呆だな」 もっと言ってやって、雷堂クン。 鳴海が御伽噺の住人だと例えたライドウを叱るのが別次元のライドウその人とは。 ……この現実こそ、御伽噺のようではないか。 |
08/12/14